忘れられない、一冊の画集

城野印刷所 営業部の「くわっぷ」です。

普段はお客さまとの打ち合わせで主に外回りをしています。
今回は、私のこれまでの城野印刷所の仕事の中で、忘れられないエピソードをご紹介します。

私たち城野印刷所は、チラシ・カタログ・リーフレット・パンフレット・会社案内・ポスター、そして書籍や図録といった、多種多様な印刷物を作っている、”総合印刷会社”です。



印刷物は受注生産、いわゆる特注品になるのですが、私はなかでも書籍や図録といった製本物の経験が多く、得意としています。


製本物といわれてみなさまは何を思い浮かべるでしょうか?
「製本物」と一言でいっても、小説、自分史、写真集、絵画集など、いろんな種類があります。



印刷会社である私たちは、いわゆる出版社様と組んで本を制作することが多いのですが、個人の方から直接ご依頼を受けることもあります。
いずれも何もないゼロの状態から、1冊の本を作り上げていく工程はとても大変なのです。


お客様からご要望を聞き、カメラマンやデザイナーとの調整に走り、オペレーターや校正係とのやりとりをひたすら繰り返します。


こうして著者・出版社・デザイナー・カメラマン・印刷会社(社内でも営業・制作・印刷・製本仕上)など、たくさんの人の努力の結晶として、ようやく1つの印刷物が出来上がるのです。


作っている最中は、それこそたいへんなことの連続ですが、そんな中でいちばんの楽しみであり、最も緊張するのが"納本の瞬間"です。

著者様から直接のご依頼の時はもちろんですが、出版社様からお受けすることの多い私は、お願いをして、著者様への納本の際には極力、立ち会いをさせていただくようにしています。


多くの人の汗と涙(?)の結晶である本が、著者さまの手元に渡る瞬間、まさに喜んでいるその瞬間の顔を見たいからなのです。


私がそう考えるようになったきっかけが、今から約26年前の1995年に手掛けた1冊の画集でした。


美術科の教員をされている方からのご依頼で、翌年ヨーロッパで開催する個展に使用する、それこそ著者様にとっては”一生の記念”になる作品集でした。



当時の私は、印刷業界に入って5年目でまだ製本物の経験も浅く、先輩の助言を受けながら作品撮影やデザイン編集、製版での本来の色合いの再現や、さらに印刷・製本、もちろん個展に間に合わせるためのスケジュール調整など…、それこそ七転八倒しながら、著者様やそのご家族まで巻き込んで、ようやく完成までこぎつけたのでした。


いよいよ納品の日。


ご自宅に訪れると著者様とご家族の皆さんが勢ぞろいで、出来上がった本を手にして涙を浮かべながら、

「ありがとうございます!」



私も思わず感極まってしまいました。


幸運にも初めて作った本でこういう貴重な経験をさせていただいたことが、今の私の原点となりました。今後もお客さまの笑顔を見るために、その一助となれるように努力していきたいと思います。


まあ、それでも納品直後に電話がかかってくると、「どこか間違ってなかったかな?」と、今でもドキドキしながら電話に出ているのはココだけの秘密です。(笑) 

くわっぷ
バイクやクルマ、乗り物大好き! でも実際は暑いのが苦手な「軟弱ライダー」! ww